
『キャプテントキオ』
西暦200X年、廃墟と化した東京都を舞台に、夢と情熱を燃やす若者たちの姿を描いたアナーキーでクレイジーな青春映画。アニメ『北斗の拳』ばりに絶叫するナレーションを、オリジンである千葉繁氏が担当。
解 説 / ROOTS
『キャプテントキオ』は、もともとは『19』の次回作として準備していた作品だった。当時は実現に至らず、2004年『スペースポリス』を先に完成させた。この間にも企画をブラッシュアップして、2006年、撮影にこぎつけた。
北九州の門司競輪場跡地にセットを組み、1カ月のオールロケーション撮影。小澤俊晴プロデューサーと、幾度もピンチを乗越え、映画をかたちにした。
作品制作を通して、小澤プロデューサーの「表裏比興の者」と言うべきタフな交渉術を間近で見させてもらったことが、いまの自分のものづくりの血肉となっている。
どんなに大喧嘩しても、打合わせ終わりに必ず食事に誘ってくれて、酔って上機嫌になった小澤さんが、映画の話をするのが大好きだった。
言 葉 / PIECE
『キャプテントキオ』は、自伝的な映画だ。
映画監督を目指す主人公の《フルタ》は、少年時代の僕だ。僕が演じた《映画屋》は、青年時代(当時)の僕。映画の中で、ふたりの自分が対話をしている。
もうひとつ《未来の自分》の姿として、かつて俳優だった老人と、映画をプロパガンダとして利用する東京都の支配者、ふたりのキャラクターに分岐して登場させた。もうすぐ僕も、彼らの年齢に近づく。
この映画を撮り終えたとき、ちょうど30歳だった。
2005年には、『カインの末裔』の撮影も行われていて、2006年『キャプテントキオ』の撮影と合わせて、自分にとって大きな節目となった。モニュメントのような映画製作と主演映画の撮影を終え、公開が終わったころ、僕は『あしたのジョー』でいう《真っ白な灰》の状態となっていた。
追 悼 / R.I.P.
2007年、老人役の石立鉄男さんが亡くなる。
世捨て人だった老人が、挫折した少年を奮い立たせるため、かつて俳優だったことを明かすシーンを、石立さんはいたく気に入っていた。
撮影前、セットを確認しにやってきて、熱心に動きを確認していたことを覚えている。劇中で使用していたパイプは石立さんの私物で、セットの隅でいつもぷかぷか煙をふかせていた。
「いつか熱海へ遊びにきなさい。一緒に酒を飲もう」と、クランクアップの日、わざわざごつい手袋をぬいで握手をしてくれた。
この約束は果たせなかった。
石立さんの手のひらは、無骨であたたかかった。
2023年、音楽を担当したPANTAさんが亡くなる。
頭脳警察の攻撃的なイメージとは真逆の、明るく朗らかな人柄で、いろんなアイデアを柔軟にかたちにしてくれる人だった。
劇中歌を僕が作詞、PANTAさんが作曲、泉谷しげるさんが歌った。ビクタースタジオでの音楽作業のとき、歌入れのためにやってきた泉谷さんと一緒に、3人でおすすめ映画のVHSを回しあったり、本当にたのしかった。
いつも突然、電話がかかってきたが、いまでもPANTAさんからかかってきそうで、電話番号は消していない。

『キャプテントキオ』
スタッフ / STAFF
脚本・監督 / 渡辺一志
プロデューサー / 小澤俊晴
音楽 / PANTA(頭脳警察)
主題歌 / 髭 HiGE「ドーナツに死す」
出 演 / CAST
フルタ / ウエンツ瑛士
ニッタ / 中尾明慶
アロハ / いしだ壱成
署 長 / 日村勇紀(バナナマン)
モヒカン / 渋川清彦
映画屋 / 渡辺一志
ナレーション / 千葉繁
老 人 / 石立鉄男
都知事 / 泉谷しげる
35mm / 96分 / 2007
配給 / プログレッシブ・ピクチャーズ / ディーライツ