彼がワタナベです。『19』は、素晴らしい映画

アニエスベー(ファッションデザイナー)


『19』

これは実際に起きた事件を元につくられた物語である。男たちを乗せ、孤独と焦燥感を埋め合わせるように荒涼としたアスファルトを疾走する盗難車。冗談や音楽と同じ地平に「気分」として存在する暴力、そして誘拐。夏の海、あてのない旅の中で芽生えた男たちの友情が、ざらついた映像に激しく交錯する。

海外のさまざまな映画祭で高い評価を受け、サラエヴォ映画祭では新人監督特別賞を受賞。ファッションデザイナーのアニエスベー氏に絶賛を浴びた、弱冠23歳、渡辺一志監督衝撃のデビュー作。



受賞 / AWARD

SARAJEVO Film Festival
“Best First Feature Honorable Mention”

映画祭 / Film Festival

トロント国際映画祭、サラエヴォ映画祭、シンガポール国際映画祭、台北金馬映画祭、高雄電影節、高崎映画祭 …etc


解 説 / ROOTS

作品の成り立ちを、ちゃんとした時系列で説明する。

1996年、大学生のとき、8mm版の『19』を撮った。50分ほどの中編。8mm版は、ぴあフィルムフェスティバルで準グランプリを獲得。海外の映画祭へ出品しようと試みたが、当時は最低でも16mmフォーマットでなくてはならず、断念。8mm版の展開は、ここで終わる。

1999年、23歳のとき、長編映画用に書き直した脚本をGAGAへ持ち込み、3,000万円の予算がつき、35mm版『19』を撮影。


完成後、1年間は「海外の映画祭に出品する」という配給側の戦略で、さまざまな国の映画祭に参加した。その中のひとつ、サラエヴォ映画祭で、ファッションデザイナーのアニエスベー氏と出会い、彼女のサポートで35mm版『19』は世界配給へと発展。

三池崇史監督の映画『ビジターQ』に出演したのも、2000年のトロント国際映画祭で35mm版『19』を見てくれたことがきっかけだった。

2001年、『ビジターQ』が公開されたあと、テアトル新宿にて35mm版『19』レイトショー公開。
僕は25歳になっていた。



言 葉 / PIECE

『19』という映画は、8mm版、35mm版を通して、僕の青春時代がすべて詰まっている。

故郷の名古屋で8mmカメラ片手に映画を撮っていた学生時代から、上京し自分の父親くらいの年齢のスタッフたちと劇場映画を撮影した。


これが、1996年から1999年までの3年間のできごと。映画が公開される2001年までを含めると5年間。僕の青春時代は8mm版『19』で始まり、35mm版『19』でモラトリアムが終わる。


アニエスベー氏は、2001年にサラエヴォ映画祭で出会ってから、これまでずっと応援を続けてくれている。

パリのポンピドゥー・センターでの上映後、映画で使ったHAPPY?Tシャツをプレゼントしたところ、とても喜んでくれて、アニエスベーからリリースされることになった。彼女の運転するフォルクスワーゲンでパリを案内してもらったのは、とてもよい思い出だ。

また、2020年に『19』がBlu-ray化されたさいも、アニエスベー渋谷店で作品展示およびコラボレーションTシャツがリリースされた。


追 悼 / R.I.P.

2010年、警察官役を演じた野沢那智さんが亡くなる。

当初、映画への出演を断られたが、律儀にも僕に断りの電話をくれた。ずぶの素人の僕が映画に出演すると知ると、「監督がそんな大それた挑戦をするなら、断れない」と、出演をOKしてくれた。

映画の公開後も交流は続き、もう1本、那智さんに演じてほしい役があり準備をしていたが、実現する前に亡くなってしまった。那智さんの訃報は、映画『USB』舞台挨拶のため、四国へ向かう途中で聞いた。

いつも、那智さんのことを思い出すとき、「声」と一緒に、『19』の撮影現場で絶えずタバコの煙をくゆらせていた、格好良い姿が浮かんでくる。少し憂いのある瞳にしわをよせた表情が、色っぽかった。


2015年、ラインプロデューサーを務めた大里俊博氏が亡くなる。

1999年、便所サンダルにボロボロのジーンズ姿の僕を見て、プロデューサーに「どこで彼を拾ってきたんだ?」と笑っていたのが出会い。


日本映画では屈指のキャリアの持ち主だが、ひょうひょうと僕のわがままをいなし、スタッフを集め、ロケ場所を決め、どんどん映画をかたちにしていった。とにかく、画に予算を使わせてくれる人だった。

「三池が、一志を探してるらしいから、会いに行ってこい」と、三池崇史監督からの連絡を取りついでくれたのも大里さんだった。

2014年、大里さんが倒れたと聞き、電話をかけた。ひさしぶりに映画を撮りますと報告したら、すごくよろこんでくれた。最後「一志、『19』のロケはたのしかったなあ」と大里さんはつぶやいて、電話を切った。それが最後のやりとりとなった。

いつも本を読んでた大里さん。読み終わると僕にくれた。いまは僕が、読み終わった本を若者にあげるようにしている。


『19』35mm版

監督・脚本 / 渡辺一志


出 演 / CAST

宇佐美 / 川岡大次郎

横 浜 / 渡辺一志

千 葉 / 野呂武夫

神 戸 / 新名涼

浜辺の男 / 遠藤雅

警察官 / 野沢那智


配給 / GAGA / 35mm / 82分 / 2001


watanabekazushi.com ››